国立大学法人 東京海洋大学

海洋生命科学部食品生産科学科

安全で信頼性の高い食品を持続的に供給するため、食資源を余すことなく利用する技術について、化学、微生物学、物理学の視点から教育・研究を行っています。

ABOUT食品生産科学科について

古くから日本では海からの恵みは「食」の中心であり、経験に基づいた優れた加工・保存方法が伝えられてきました。近年では、これらを科学的に検証し、さらに向上させる技術や新しい技術が開発されています。社会的には、より高い信頼性と安全性が食品に求められており、科学的な根拠に基づく対処が必要となっています。

本学科では、栄養やおいしさ、さらには健康に役立つ機能を引き出し、食中毒などの危険のない安全な食品を生産するための理論と技術を学びます。食品を科学的に評価するためには、化学的・微生物学的な視点からのアプローチが必要です。また、食品の製造プロセスにおいては物理学的・工学的な視点からのアプローチが必要です。これらの幅広い知識と理解力を身に付けて、原料から製品を製造して消費されるまでの過程を総合的に把握できる人材を育成します。

CLASS4年間で学ぶ授業例

研究・講義紹介

食品微生物学実験
さまざまな食品で危害となる主要な食中毒菌の検査法を身につけ、その特性を理解することで食品の安全性への意識を高めます。また、食品の賞味期限を延長するための具体的方法を習得し、品質の維持について理解します。

食品工学実験
食品を加工・調理・保存するためには、凍結・加熱・乾燥・分離といった様々な操作が必要です。この実験では、これら基本原理の理解とともに、温度、圧力、流量などの物理量の測定法、物性・特性の検出法について学びます。

RESEARCH研究紹介

食品衛生化学

食物アレルギーから考える食品の安全性
私たちの周りは様々な食品であふれていますが、毎日口にするものであるからこそ食品の安全性や品質に気を付けなければいけません。特に食物アレルギーは重篤な健康被害をもたらすこともあるため、その原因物質(アレルゲン)や作用機序についての研究は食品衛生上とても重要です。
私たちの研究室では、魚介類やその寄生虫(アニサキス)のアレルゲンの特定、食品原料・医薬品・化粧品に含まれる成分のアレルゲン性を予測する新たなシステムの開発、さらには、ヒト脳機能の改善を視野に入れたイカ由来の神経伝達物質や魚介類の食味向上などについての研究を行っています。安全で品質が良く人類の幸福につながるような食品を皆さんに提供できるように、最新技術を駆使して幅広い研究に取り組んでいます。
クリーンベンチや実体顕微鏡を使った研究風景

食品加工学

付加価値の高い水産食品加工技術に関する研究
一般的な食品加工の工程には、原料の採取、洗浄、混合、加熱、乾燥、包装、貯蔵などがあります。これらの製造プロセスの中で、食品素材のみならず、加工・貯蔵の技術およびそれに伴う成分変化は食品の品質に影響します。私たちの研究室では、化学的、物理的、あるいは生化学的な視点から、安全かつ付加価値の高い食品(主として水産食品)の製造プロセスを具体化するための食品設計技術の開発や製造プロセスにおける安全評価システムの確立を目指しています。具体的には、原料から消費に至るまでの安全性に関わるプロセスの高精度な定量的解析、水産食品低温利用技術の開発、未利用食料資源の有効利用、及び付加価値の高い水産食品加工技術の開発に関する総合的な研究に取り組んでいます。
未利用資源の有効活用の一例~
サバの皮から生分解性フィルムの開発

食品熱操作工学

食品の熱処理の予測と制御
熱処理は、食品の貯蔵寿命を延ばすために最も広く使用されている技術の1 つであり、微生物を死滅させるともに、食品の風味、食感、外観、および消化率を改善させます。一方で、過度の加熱は、栄養成分の消失や好ましくない食感となって品質が低下する可能性があります。そのため、短時間で均一な温度分布が得られ、なおかつ環境負荷が少ない熱処理方法が望まれます。これを実現できる技術の1 つが通電加熱です。通電加熱は食品に直接電流を流すことによって生じるジュール熱を利用したもので、様々な食品加工への適用が期待できます。さらにコンピューターシミュレーションを活用することで、熱処理における温度変化を予測し、微生物の死滅の程度や、品質変化などを計算し、最適な熱処理条件を導くことも重要です。
ジュール熱の発生に関わる電気伝導度を測定する様子

食品保全化学

食品中の脂質および脂溶性化合物の健康機能や体の中での役割を調べる
脂質(油)には多種多様な種類があり、体の健康を維持するために重要な役割を担っています。私たちは脂質を“ 有機合成”という方法を用いて、新規の脂質や機能性が高い脂質を作り出し、マウスやラットなどの動物や細胞を用いてその健康機能を評価しています。健康機能だけでなく、脂質がどのように体内にとりこまれ、どのような機能が体内で発揮されているのかを追跡するような実験も行っています。このように食品中の脂質や脂溶性化合物を用いて人々の健康維持・増進につながるような研究に取り組んでいます。
有機合成の実験風景

CAREER進路・就職

卒業後の進路

就職先

味の素、アヲハタ、イオン、伊藤ハム、ヱスビー食品、エバラ食品工業、カゴメ、カルピス、紀文、キユーピー、 ケンコーマヨネーズ、JT、資生堂、水産庁、スターゼン、大和製罐、地方自治体職員(食品衛生監視員、教員)、東洋食品研究所、東洋水産、永谷園、なとり、ニチレイ、日清オイリオ、日清食品、日清製粉グループ本社、日本食品分析センター、ニッスイ、日本生活協同組合連合会、ニップン、日本ハム、ハウス食品、はごろもフーズ、不二製油、プリマハム、ブルドックソース、宝幸、丸大食品、マルハニチロ、ミツカン、三菱商事ライフサイエンス、明治、森永製菓、森永乳業、山崎製パン、ヤマサ醤油、雪印メグミルク、ロッテ 等

就職先業種

令和3年度卒業者産業別就職状況(%)
※進学等を除く学部卒業者の実績

POLICYポリシー

ディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)開く

1.卒業認定・学位授与⽅針

 ⾷品⽣産科学科では、⾷品の⽣産に関⼼を持ち、⾷品の安全性、機能性及び⾷品加⼯に関する⼯学的そして科学的な幅広い知識と技術を習得し、さらに、これらを基盤として、諸問題に対し⾃ら考え、解決する素養と能⼒を⾝につけた者に学⼠(海洋科学)の学位を 授与します。

2.学修成果の到達⽬標

(1)専⾨的学識
 ⾷品⽣産に関し、原料の⽣産、加⼯、流通、消費に⾄る各段階において、⽣物学的、化学的、⼯学的に各諸問題を分析・解決することのできる専⾨知識と技術を⾝につけている。
(2)豊かな国際性と幅広い教養
 語学⼒を含むコミュニケーション能⼒やプレゼンテーション能⼒、⾼い国際的・⽂化的教養を⾝につけている。
(3)⾃ら考え判断する能⼒
 様々な知識や情報に基づき、⾃ら論理的に考察し、⾼い倫理観を持って的確な判断を下せる能⼒を⾝につけている。
(4)現場で通⽤する実践⼒
 実験、実習や卒業研究などを通して得た専⾨的な知識と技術、経験、そして問題解決能⼒を融合し、⾷品⽣産現場における諸問題をグローバルな視点も含めて、主体的かつ実践的に探究・解決・⾏動できる能⼒を⾝につけている。

カリキュラムポリシー(教育課程編成・実施の方針)開く

1.教育課程を編成するための⽅針

 ⾷品⽣産科学科では、以下「2」に挙げる4つの素養と能⼒を⾝につけさせるため、「総合科⽬」、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬)」を体系的に編成します。「総合科⽬」は幅広く教養と語学⼒を⾝につけさせるための科⽬群として、「専⾨導⼊科⽬」及び「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」では多様化する専⾨分野を理解するために必要となる基礎⼒を充実させるための科⽬群として編成します。その上で、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬)」は、特に⾷品を扱う上で⽋かせない多⾯的な探究能⼒を習得するため、⽣物学、化学、物理学、⼯学などを基礎とする幅広い専⾨科⽬からなる区分として編成し、⼤学院教育に接続します。さらに「グローバル・キャリア関連科⽬」により国際社会、産業界等の社会への接続をスムーズにします。

2.教育の内容及び教育の実施⽅法に関する⽅針

 授業科⽬区分として、「総合科⽬」、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(基礎教育))」、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(実践教育))」、「グローバル・キャリア関連科⽬」を設け、講義、演習、実験及び実習を実施します。         

(1)専⾨的学識
 本学科のあらゆる分野において基礎となる専⾨的な知識を学科の全ての学⽣に⾝につけさせるため、1年次〜3年次において「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(基礎教育))」を実施します。また、⾷品⽣産に関し、⽣産、加⼯、流通、消費に⾄る各段階に対する深い専⾨知識とそれぞれについての諸問題を分析・解決できる知識と技術を⾝につけさせるため、主に3年次において「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(実践教育))」の科⽬群を学修させます。「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(実践教育))」の講義、実験、実習などを通して、問題点の抽出や把握、その解決を⾏うための論理的思考と技術や⼿技を実際に経験すると共に、他者との協働やリーダーシップを学修させます。
(2)豊かな国際性と幅広い教養
 幅広い教養、論理的思考能⼒、⽂化的素養、国際的視野、コミュニケーション能⼒、プレゼンテーション能⼒を養うことを⽬的に、「総合科⽬」を実施し、また、英語資格試験・留学・キャリア形成それぞれに関連する「グローバル・キャリア関連科⽬」を実施します。専⾨科⽬を学ぶための基盤となる体系的な⾃然科学、数理科学、及び⼈⽂・社会科学の基礎知識、基礎的な情報技術を⾝につけさせるために、主に1年次と2年次で「専⾨導⼊科⽬」及び「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」を実施します。
(3)⾃ら考え判断する能⼒
 様々な情報に基づいて⾃ら論理的に考察し的確に判断する素養と能⼒を⾝につけさせるために、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬」として演習、実験、実習及び4年次のセミナーと卒業論⽂を実施します。さらに、倫理的な判断を⾏える能⼒を⾝につけさせるために、4年次のセミナーの⼀部で研究者倫理に係わる教育を⾏います。
(4)現場で通⽤する実践⼒
 上記(1)から(3)までの素養と能⼒を総合し、海洋の現場で活かす応⽤⼒と実践⼒を⾝につけさせるために、4年次にセミナーと卒業論⽂を実施し、解決すべき課題の発⾒、解決に⾄る道筋の計画、計画に基づく実⾏と検証を⾏える能⼒の育成を図ります。また、国際社会、産業界等の社会への接続を円滑に⾏うために「グローバル・キャリア関連科⽬」を⾏います。         

3.学修成果の評価⽅法に関する⽅針

 全ての科⽬において、試験、レポート、プレゼンテーション等で学修成果と到達⽬標の達成度を厳格に評価します。

アドミッションポリシー(入学者受入れの方針)開く

1.入学者受け入れ方針

 食品生産科学科では、安全で信頼性の高い水産生物を主とする食品を持続的に供給するため、食資源を化学、微生物学、物理学、工学的な手法を用いて余すことなく利用する技術開発を行い、食品の安全性の確保・向上と新しい機能をもつ食品の開発と評価について教育・研究する。水産生物を食資源として有効利用すること、食品の原料から製造加工、流通、消費に至るまでを対象とした安全性の確保・向上、食品の新しい機能開発などに関心がある人を求める。

2.求める素養・能力

【専門的学識を修得するための素養・能力】
  • 入学後の学修に必要な幅広い基礎学力を有していること。とりわけ数学と理科(物理、化学または生物)の基礎学力を有していること(※)。
(※)数学については、数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B、数学C
物理については、物理基礎、物理
化学については、化学基礎、化学
生物については、生物基礎、生物
【自ら考え判断する能力を修得するための素養・能力】
  •  旺盛な学修意欲があり、新しい課題に積極的に取り組むこと。また、「食」に関する社会的な問題にも幅広く関心を示し、主体的に考える姿勢を持つこと。
【豊かな国際性と幅広い教養、現場で通用する実践力を修得するための素養・能力】
  •  他人とのコミュニケーションに積極的であり、適切な自己表現ができること。また、異なる考え方や文化を尊重し、グローバル社会での活躍を目指すこと。

3.入学者選抜の基本方針、評価方法

【入学者選抜の基本方針】

 本学科での教育を受けるうえで必要な素養・能力を判定するために、以下の選抜を行う。

一般選抜(前期日程・後期日程)

 一般選抜(前期日程)では、基礎学力を幅広く身につけている人を選抜するために、大学入学共通テスト及び個別学力検査(数学・理科)の総合点で判定する。一般選抜(後期日程)では、基礎学力とともに、考えを論理的に展開し、適切に表現する能力を身につけている人を選抜するために、大学入学共通テスト(4教科5科目)及び個別学力検査(小論文)の総合点で判定する。

総合型選抜(C、E)

小論文、面接、志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心、学ぶ意欲、学ぶために必要な学力等を評価する。

学校推薦型選抜(A、B)

小論文、面接、志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心、学ぶ意欲、学ぶために必要な学力等を評価する。

私費外国人留学生特別入試

個別学力検査、面接、日本留学試験の成績、志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心、学ぶ意欲、学ぶために必要な学力等を評価する。